墨色。#1
平凡な主婦の転職先は、刺青師でした
豊咲華
あなたは何故、刺青を背負うのですか?
そう聞かれて、彫った人たちは、なんと答えるのだろうか?
明確な答えがあっても、なくても、それはおそらく、あとから取ってつけたように考え出された理由なのではないでしょうか?
脳科学の視点から言えば、例えば誰かを好きになったとして、その瞬間に理由があるのではなく、あとから好きになった理由を、脳は探し始めるのだという。つまり、理由が見つかる前の、無意識の状態の時に、脳はすでに何かを選んでいるという事になる。
人は、無意識の状態で、何かを選択している。
そんなバカな!って、声が聞こえてきそう(笑)。
何かを選択するような、必然がそこにあったのだとしたら?
私にも、そんな経験がいくつもある。
なぜ、惹かれたのか?興味をもったのか?好きになったのか?分からないことがたくさんあった。
まさに、刺青。そして、この仕事。
平凡だった主婦をやめ、刺青師という職業に就いたあの日の理由も、
「魂が鼓動したから。」
そう答える以外に、言葉が見つからないのです。
女性でありながら、手彫りという(のちに説明)特殊な技術の刺青師として活動し、十六年が過ぎた。
そんな少しばかり変わった私の世界を、理解してもらおうなどとは、微塵も思っていない。
もしも今あなたが、刺青の世界に興味を持っていてもいなくても、かまわない。
嫌っていようと、偏見があろうと、なかろうと構わない。
ただ、この職業に就いて私が通った道は、私にとって必要だった。
多くの人たちの「体」というキャンパスを相手にした仕事を通じて、人生の不思議に触れることができたこと。
社会の普通というレベルにない人生が教えてくれた、生きることの意味。
そこで感じた自分の内面を、素直に言葉にすること。
そんな言葉たちに何かを感じてくださり、更なるそれぞれの必然に繋がるきっかけになれば、この上なく幸せに思う。
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